目次
1.はじめに
2.どうして痛むのか
3.いつ医師の診察を受けるべきか
4.頭痛の診断のために用いられる検査について
5.片頭痛とは何か
6.偏頭痛はどうやって治療されるのか
7.偏頭痛以外の血管性頭痛
8.筋収縮性頭痛とはなにか
9.頭痛が深刻な病気の警告となる時とは
10.子供たちの頭痛の原因について
11.結語
12.用語解説
5.偏頭痛とは何か
血管性頭痛の中で最も一般的なのは偏頭痛です。偏頭痛は、頭部の片側あるいは両側の激しい痛みと、吐き気や時として起こる視覚障害で特徴づけられています。
昔バスケットボールのスター選手だったカリームアブドゥル ジャバーは、14歳のときに初めて偏頭痛を経験したことを覚えています。その痛みは、以前にあった軽い頭痛による不快感とは違ったものでした。「これを経験したとき、『これが頭痛というものか。』、と僕は思ったね。」と彼は言います。「痛みはとても強く、吐き気がして、光に対してとても敏感になったんだ。考えられることといったら、それがいつ終わるんだろうって事だけ。1時間の間ずっと薄暗い部屋に閉じこもっていたら、頭痛は去っていったんだけどね。」
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偏頭痛の症状
アブドゥル
ジャバーの光に対する過敏性は、最も一般的な二つの偏頭痛のタイプ(典型的偏頭痛と一般的偏頭痛)に見られる基本的な自覚症状です。
この二つのタイプの違いは、典型的偏頭痛の発作の前10分から30分に見られる神経症状の有無です。これらの症状は前兆(アウラ)と呼ばれています。患者には点滅する光やジグザグの直線が見えたり、一時的に何も見えなくなったりします。その他にも言葉がしゃべりづらくなったり、腕や足に脱力感を感じたり、顔や手にちくちくした痛みを感じたり、錯乱状態になったりします。
典型的偏頭痛の痛みは、強烈で、拍動性で、叩きつけるような感じ、といった表現がなされ、それらは前頭部、側頭部、耳、顎、目の周囲などに感じられます。典型的偏頭痛は頭の片側から始まりますが、やがて両側に広がる場合もあります。発作は1−2日続きます。
一般的偏頭痛は、人々の間ではより多くの発症をみますが前兆(アウラ)はありません。しかし発作の前に、朦朧感、不快感、疲労感、普段見られないような尿閉感など、曖昧な自覚症状が見られる人たちもいます。一般的偏頭痛の頭痛の時期には、吐き気や嘔吐のほかに、下痢や尿意頻回といった症状が出るときもあります。一般的偏頭痛の痛みは、3-4日継続します。
どちらの偏頭痛も、週に2-3回といった具合に頻繁に生じる場合もあれば、2-3年に一度といったように稀にしか起こらない場合もあります。どちらも時を選ばずに発症します。しかしながら人によっては、生理の前後とかストレスの多い1週間を終えた土曜日の朝とか、予想可能な時期に偏頭痛を経験します。
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偏頭痛の経過
偏頭痛の正確な原因については、研究者にもよくわかっておりません。しかし、脳内の血流の変化が重要な鍵であることについては、一般的に意見の一致を見ているようです。偏頭痛を持つ人々では、様々な引き金となる刺激に対して、血管が過剰に反応するようです。
頭痛が起こる過程に見られるこうした血流の変化や生化学的な変化を説明する仮説を、研究者たちは編み出しています。この仮説によれば、ストレスのような引き金に対して神経系が反応し、神経の豊富な脳底部の動脈にスパズム(攣縮)が結果として生じるのです。スパズムは、頭皮や頚部の動脈と同様に、脳に血液を供給している動脈を遮断したり収縮させたりします。こうした動脈の収縮によって、脳の血流が低下します。それと同時に、血小板という血液を固める粒子が凝集して、セロトニンという化学物質が放出されると信じられています。セロトニンは血管を強力に収縮させる物質で、さらに脳の血流は低下します。
血流の低下により脳の酸素の供給量が減少します。こうして視覚障害や言語障害などの脳卒中に似た症状を、頭痛に前駆する症状として呈するのです。
酸素の供給量の低下に反応して、脳内のある種の血管は脳のエネルギー代謝の必要量に応じるために拡大します。この拡大、すなわち血管拡張が広がっていき、ついには頚部や頭皮の血管にも及ぶことになります。こうした血管の拡張は、様々な組織や血液細胞からプロスタグランディンと呼ばれる痛みの原因物質を放出させる引き金となります。炎症と腫脹を引き起こす化学物質や、痛みの感受性を増す物質も同時に放出されます。こうした化学物質の循環と頭皮の動脈の拡張が、痛みに過敏となった痛覚受容体を刺激するわけです。この仮説に従えば、結果として拍動性の頭痛が起こってくるのです。
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女性と偏頭痛
男と女、ともに等しく偏頭痛を患うように見えますが、病状は成人の女性により多く見られます。男も女も子供の頃に偏頭痛を発症することがありますが、病状の好発年齢は5才から35才までの間です。
女性ホルモンと偏頭痛の関係はいまだ明らかになっていません。女性では『生理偏頭痛』(生理の前後に起こる頭痛)が生じることがあり、これは妊娠期間中に消失する場合があります。しかし一方で、妊娠してから初めて偏頭痛を発症する女性もいます。また閉経後に初めて発病する人もいます。
頭痛に対する経口避妊薬の影響には困惑させられます。偏頭痛を持つ女性で避妊薬を服用している女性は、時としてより頻度の高い激しい発作を経験する、と研究者は報告しています。しかし一方で、避妊薬を服用しているときのほうが、発作の頻度と激しさは減じるという女性たちもいます。また、普段頭痛のない女性が経口避妊薬を服用したときに、その副作用として偏頭痛を発症する事もあります。世界中の研究者たちが、こうした自然に存在するホルモンが頭痛の原因となりうる特異なメカニズムを解明しようと、偏頭痛の女性患者のホルモンの変化を研究しています。
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頭痛の引き金
多くの患者には偏頭痛の家族歴が認められますが、この病気の遺伝的性格はいまだよく判りません。偏頭痛を患う人々は、血管の制御における遺伝的異常を持っていると思われます。
「それは髪の毛のような引き金のついた、撃鉄を下ろした鉄砲のようだ。」、と専門家は説明しています。「人は偏頭痛の可能性を秘めて生まれたならば、頭痛はほんの些細な出来事によってその引き金を引かれるのです。」
発症の引き金となるものには、生物学的な環境因子と同様に、ストレスやその他の正常な感情変化も含まれます。疲労、ギラギラ輝いていたり点滅したりする光、気候の変動、ある種の食べ物、などが偏頭痛を引き起こします。ヨーグルト、ナッツ、ライ豆、などといった一見無害な食べ物を食べることが、結果として苦痛に満ちた偏頭痛の痛みに終わるという事実は、俄かに信ずることができないかもしれません。しかしながら一部の研究者たちは、tyramineのような血管収縮物質が、こうした食品やその他の食物に含まれていると確信しています。つまり、これが偏頭痛のプロセスの第一歩となるわけです。またある研究者たちは、感受性のある人々では食べ物がアレルギー反応を引き起こし、頭痛の原因になっていると信じています。
食物が原因で起こる偏頭痛の場合には、大抵が食べた直後に発症するのですが、すぐに痛みが生じない場合もあります。研究者の報告によれば、偏頭痛はストレスが実際起こっている間だけでなく、血管系がいまだ過敏状態であるその後のしばらくの間にも起こりうるといいます。例えば、夜中に偏頭痛で目がさめる場合には、ストレスによる遅延反応の結果であると考えられています。
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その他の偏頭痛
典型的と一般的偏頭痛に加えて、偏頭痛はその他の形態を取ることもあります。
麻痺性偏頭痛では、片麻痺という身体の半分の一時的な麻痺を伴います。ある人たちは視覚障害と眩暈(周囲の景色が回転しているようにに感じること)を体験します。こうした兆候は頭痛の始まる前の10分から90分ぐらい続きます。
眼球運動障害性偏頭痛では、痛みが目の周囲に起こり、まぶたが垂れ下がったり、物が二重に見えたり、その他の視覚障害が起こったりします。
脳底動脈偏頭痛では、脳の主幹動脈が関与しています。頭痛の前の症候として、眩暈、複視、協調運動障害が起こります。このタイプの偏頭痛は、青年期と若い成人女性に多く見られ、女性の場合には生理周期と関わっていることが多いようです。
良性活動性頭痛では、走ったり、物を持ち上げたり、咳をしたり、鼻をかんだり、腰を折り曲げたりしたときに誘発されます。この頭痛は身体運動とともに始まり、殆どが5-6分以内に終わります。
偏頭痛重積とは、72時間かそれ以上に継続する稀で重症の偏頭痛の一種です。痛みと吐き気が相当に激しいので、この種の頭痛患者は入院が必要になります。ある種の薬物はこの偏頭痛重積の引き金になります。偏頭痛重積患者の多数が、頭痛発作を経験する前に鬱状態や神経症を患っている、と神経学者は報告しています。
無痛性偏頭痛は、目の症状、吐き気、嘔吐、便秘、下痢といった偏頭痛の諸症状で特徴付けられます。しかし患者は頭痛を感じることはありません。頭痛の専門家によると、体の一部の原因不明な疼痛、発熱、フラフラした感じ、などもこの無痛性偏頭痛の一種かもしれないということです。
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6.偏頭痛はどうやって治療されるのか
石器時代には痛みを取るために、頭痛を患う人の頭蓋骨の一部を石の道具で切除していました。また9世紀のイギリスの島々では、これも気味の悪い治療法ですが、「古い種子、牛の脳、ヤギの糞を食用の酢に溶かしたもの」を飲んでいました。幸いなことに今日の頭痛の患者は、こうした過激な治療を受けることはありません。
薬物治療、バイオフィードバック訓練、ストレス回避、食事からある種の食物を排除すること、などが偏頭痛やその他の血管性頭痛を予防し制御するための一般的な方法です。偏頭痛持ちのジョアンは、抗偏頭痛薬と食事治療の組み合わせで治療されました。
水泳とか積極的なウォーキングなどの定期的な運動は、偏頭痛の頻度を減らし痛みの程度を緩和します。ジョアンはジェット風呂やヨガの風呂が緊張緩和に役立つことを発見しました。
偏頭痛が起こっているとき、アイスパックで頭を冷やしたり、痛みのある側の耳のすぐ前の動脈を圧迫することで、一時的に痛みが和らぐことがあります。
薬物治療
薬物を使った偏頭痛の治療法には、発作の予防と、頭痛発作が起こってしまってからの症状緩和、という二つの方法があります。
偏頭痛を予防するいくつかの薬物が最近開発されました。その中に、脳内の鍵となる化学物質であるセロトニンの作用と同じ働きをする、セロトニン作動薬があります。典型的偏頭痛と一般的偏頭痛を軽快させるために最も普通に使用される薬物には、スマトリプタンがあります。この薬はセロトニン受容体と結合します。理想的な効果を挙げるためには、この薬を偏頭痛の初期段階で服用します。もし服用後1時間経過しても頭痛が進行する場合には、もう一度薬を服用してかまいません。
狭心症、脳底動脈性偏頭痛、高度の高血圧症、或いは血管や肝臓の疾患を持つ人たちには、スマトリプタンを投与しないように医師は注意を払う必要があります。
頻度の少ない偏頭痛の場合には、頭痛を未然に防いだり痛みの程度を緩和するために、頭痛の前兆が現れたら薬を服用します。軽い頭痛が時々起こるような人の場合なら、アスピリンやアセトアミノフェンを発作の初期に服用すればよいでしょう。アスピリンは痛みの閾値を上げる作用と、血小板の凝集を抑制する働きがあります。偏頭痛発作の初期段階ならば、少量のカフェインの摂取も有効です。しかし、中等度から強度の偏頭痛や群発性頭痛(「7.偏頭痛以外の血管性頭痛」を参照)の場合では、もっと強力な薬物が痛みのコントロールに必要です。
典型的偏頭痛と一般的偏頭痛の治療に最も使われる薬物の一つに、頭痛発作の痛みの原因となる血管拡張に対し血管を収縮させる作用を持つ、酒石酸エルゴタミンがあります。最大効果を得るためには、この薬は発作の初期段階に服用します。もし偏頭痛が1時間も進行して最後の拍動期に入ってしまうと、多分エルゴタミンは効果を発揮しないでしょう。
エルゴタミンは嘔気や嘔吐を起こすことがありますので、吐き気止めの薬といっしょに服用するのがよいでしょう。エルゴタミンの過剰な服用や、狭心症や強度の高血圧症、血管系や肝臓や腎臓に病気のある人の服用について、避けるべきであると研究者たちは注意を呼びかけています。
酒石酸エルゴタミンを服用できない人々の場合には、拡張した血管を収縮させたり血管の炎症を抑えるほかの薬でよくなる可能性があります。
月に3回以上の発作がある場合には、予防的治療が推奨されます。典型的偏頭痛と一般的偏頭痛の予防治療には、血管の収縮を抑制するmethysergide
maleate、血管の拡張を止めるpropranolol
hydrochloride、坑鬱剤のamitriptylineなどが使用されます。
MAO(モノアミンオキシダーゼ)阻害薬と呼ばれる坑鬱剤には、やはり偏頭痛の予防に効果があります。脳の動脈を収縮させるセロトニンという物質の神経系への取りこみを促すモノアミンオキシダーゼという酵素を、これらの薬はブロックします。
MAO阻害薬には重大な副作用が出る場合があります。特に動脈の収縮作用を持つtyramineを含む食べ物や飲み物といっしょに服用すると、副作用が出やすいといわれています。
近年、偏頭痛を予防するためのいくつかの薬物が開発されました。これらの中には、セロトニン様作動薬といって、この重要な脳の物質と同じような働きをする薬物があります。こうした薬が早期に使用されることが大切です。
多くの偏頭痛薬には副作用があります。しかし他の薬と同じように、注意深く医師の指導のもとに服用すれば比較的安全です。予防的な投薬による長期的な副作用を避けるためには、こうした薬物の服用量を減らしていき、できる限り早く中止をするように、頭痛の専門家はアドバイスしています。
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バイオフィードバックと緊張緩和の訓練
薬物治療は多くの場合、バイオフィードバックと緊張緩和の訓練が併用されます。バイオフィードバックとは、血圧、脈拍、体温、筋肉の緊張、脳波などの身体機能の指標をうまくコントロールするテクニックのことを言います。体温バイオフィードバックにより、人は意識的に手の温度を上昇させることができます。手の温度を上昇させることのできる人たちでは、偏頭痛の頻度や痛みの度合いを減らすことができることがあります。こうした自己制御治療のメカニズムについては、研究者たちの研究が続いています。
頭痛の専門家は、「バイオフィードバックに成功するためには、集中力を高めることと、良くなろうという強い意思をもつことが必要である。」、と言っています。
体温バイオフィードバックを訓練する患者は、人差し指か手の温度をモニターに伝達する器具を身につけます。患者が手の温度を上げようとしている間、モニターの方では温度計で温度が読み取れるか、或いは温度の上昇とともに強さの増す音やブザーが鳴るようになっていて、患者にフィードバックされます。患者にはどうやって手の温度を上げるかを説明するのでなく、「手がとても温かくて重いと感じるようにイメージしてください。」といった暗示を与えます。
薬物治療を止めて体温バイオフィードバックに切り替えた一人の頭痛患者は、「私はとても想像力が豊かなのよ。」と言います。彼女の経験していた頭痛の回数と強度は、このテクニックによって減少したのです。
EMG(electromyography)訓練と呼ばれる別のタイプのバイオフィードバック法では、患者は顔や首や方の筋肉の緊張度をコントロールすることを学びます。
これらどちらのバイオフィードバックでも、精神の緊張緩和訓練と組み合わせて行い、それを通じて患者は、精神的にも肉体的にもリラックスする方法を学びます。 バイオフィードバックはポータブルモニターを使えば家庭でも訓練できます。しかし治療の最終のゴールは、患者から器械の必要性を取り去ることです。そうすれば患者は、頭痛の最初の兆候の段階で、何処にいてもこのバイオフィードバック法を実行できるのです。
偏頭痛の食餌療法
偏頭痛を患う人たちの中で、頭痛発作を引き起こす食べ物や飲み物を排除する治療プログラムだけで症状の改善をみる人たちは、比較的少数であろうと研究者たちは考えています。
低血糖を予防する食餌療法で救われる患者もいます。血液中の糖の低下、即ち低血糖は脳の血管を拡張させる原因となります。徹夜をするとか、食事を抜くとかいったように、食べ物なしで一定時間が過ぎるとこの状態が起こり得ます。朝頭痛とともに目を覚ます人々は、一晩食べ物なしで生じる低血糖に反応しているのかもしれません。低血糖による頭痛の治療は、少量の食事を回数を増やして患者に投与するスケジュールを立てることです。血糖制御システムを安定化するようにデザインされた特別メニューがしばしば薦められます。
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7.偏頭痛以外の血管性頭痛
偏頭痛の次に血管性頭痛として頻度の高いものは、発熱によって引き起こされる中毒性頭痛(toxic headache)です。肺炎、麻疹、おたふく風邪、扁桃腺炎などが、この重篤な中毒性血管性頭痛の原因疾患に含まれます。中毒性頭痛は、生体にない化学物質が体内に取りこまれることで発症することがあります。その他の血管性頭痛には、強烈な痛みが繰り返して起こる「群発性頭痛」と、急激な血圧上昇によって起こる頭痛があります。
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元凶となる化学物質
亜硝酸化合物に繰り返し被爆すると、顔面の紅潮をともなう鈍い拍動性の頭痛が起こります。血管を拡張させる作用を持つ亜硝酸塩は、心臓の薬とかダイナマイトなどに含まれていますが、肉の保存料としても使用されています。ホットドッグとかその他の肉の加工食品には亜硝酸ナトリウムが含まれており、頭痛の原因となり得ます。
グルタミン酸ナトリウム(MSG)で味付けされた食べ物は、頭痛を引き起こす可能性があります。醤油、肉の柔軟剤、様々なパッケージ食品などには、風味を一層引き立たせるためにこの化学物質が使用されています。
殺虫剤、四塩化炭素、鉛など、様々な家庭用品に含まれる毒物質に晒されても頭痛は起こります。鉛を含むペンキの破片を子供が飲み込めば、頭痛が起こるでしょう。鉛の蓄電池や鉛の上薬を塗った花瓶に接触しても同様のことが言えます。
画家や工場労働者たちは、溶剤を含む物質に被爆して頭痛を経験します。ベンゼンのようなこうした溶剤は、テレピン油、揮発性接着剤、ゴム糊、インクなどに含まれています。
アンフェタミンのような薬が副作用として頭痛を起こすことがあります。またその他の薬剤関連の頭痛として、偏頭痛治療薬の酒石酸エルゴタミンを長期服用した後の薬の減量期に生じる頭痛があります。
アルコールによる二日酔いはしばしば笑い話となりますが、二日酔い後の朝の頭痛は笑い事ではありません。幸運なことにこの痛みに対しては、酒石酸エルゴタミンを含め幾つかの治療法があります。二日酔いの頭痛には、アルコールの代謝を早める作用を持つ蜂蜜の摂取や、拡張した血管を収縮させるカフェインの摂取が有効です。しかしカフェインは、頭痛を治すこともありますが逆に頭痛の原因となることもあります。コーヒーを沢山飲む人がカフェイン中毒を離脱するときに、よく頭痛が起こります。
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群発性頭痛
群発性頭痛、これは2-3週間から1ヶ月の間、昼間か夜間のほぼ同じ時間に集中した頭痛が、繰り返して起こるのでこう呼ばれているのですが、一方の目の周辺に軽い痛みを感じることから始まり、その痛みは徐々に同側の顔全体に広がっていきます。疼痛はすぐに激しくなって、その犠牲者をして、床の上を歩きまわさせたり椅子を揺り動かさせたりします。群発性頭痛の患者はこう説明します。「苛々して横になることもできないんだ。その痛みにはとても耐えられるもんじゃない。」 その他の自覚症状として、鼻詰まりや鼻水、重く垂れ下がった瞼や、目の充血や涙目があります。
群発性頭痛は30分から45分継続します。しかし発作の終わりに感じる安堵感は、再発を待つ間の恐怖感と入り混じっています。不思議にも数ヶ月から数年の間、群発は消え去ります。多くの人は春と秋に一連の群発を経験します。最悪の場合、慢性的な群発する頭痛が何年も継続することがあります。
群発発作はどの年齢層にも起こり得ますが、普通20代から40代の間に初発します。偏頭痛と違って群発性頭痛は男性に多くみられ、遺伝性はありません。
群発性頭痛の患者を調べると、彼らは茶褐色の目をしていることが多く、喫煙依存やアルコール依存になりやすい傾向があります。矛盾するのですが、血管を収縮させるニコチンも、また血管を拡張させるアルコールも、両方ともに発症の引き金になります。こうした物質と群発発作の正確な因果関係は、まだよく判っていません。
こうした群発性頭痛の特異な病態にもかかわらず、その頻度が少ないことと副鼻腔炎などの疾患との類似性から、しばしば誤診されます。群発性頭痛の患者の中には、抜歯をしたり、副鼻腔の手術をしたり、心理学的治療を受けたり、痛みを癒すための無駄な努力をしている人たちがいます。
群発性頭痛の原因に関しては研究の結果いくつかの糸口が見つかっていますが、結論は得られていません。一つの糸口は未治療の群発性頭痛の患者のサーモグラムに見られるのですが、それは目の上に「cold
spot」と呼ばれる血流の低下した部分が見られることです。
群発性頭痛は突然始まり持続時間が短いので、その治療は困難を極めます。しかし研究者たちは、こういった頭痛に効果のあるいくつかの薬物を確認しています。坑偏頭痛薬の酒石酸エルゴタミンは、発作のごく初期に服用すれば、群発を和らげる効果があります。酒石酸エルゴタミンの一つの形態であるジヒドロエルゴタミンの注射は、時々群発発作の治療に使われます。
Propranololやmethysergideの服用によって発作を予防できる群発性頭痛の患者がいます。塩酸コカインの薄い溶解液を点鼻することによって、殆どの患者で群発性頭痛を速やかに止めることができるということも発見されました。コカインには痛みの伝達をブロックし血管を収縮させるという二つの作用があるので、この治療法が有効なのかもしれません。
群発性頭痛の患者に効果を示す別の選択肢として、純酸素をマスクを通して5分から15分間吸入する方法があります。酸素は脳の血流を低下させることによって群発性頭痛に効果を発揮していると思われます。
群発性頭痛の慢性患者では、痛みを取るためにある種の顔面の神経を外科的に切断したり破壊したりします。この方法には効果に限界があります。顔面の神経を切断しても、何年か後にはその神経が再生してくるからです。
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疼痛性高血圧
激怒、激しい運動、性的興奮などによって経験される急激な血圧の上昇の場合もそうですが、慢性的な高血圧でも頭痛が起こります。激しい「オルガスム頭痛」は性的絶頂の直前に起こりますが、血管性頭痛の一つだと考えられています。脳血管の突然の破綻も起こり得ますので、この種の頭痛の場合には医師の診察を受けるべきでしょう。
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8.筋収縮性頭痛とはなにか
午後五時、貴方の上司は今20ページに及ぶ書類の要約を貴方に依頼しました。期限は明日です。貴方は憤怒し疲労感に包まれ、その課題について考えれば考えるほどに緊張が高ぶります。歯を噛み締め、眉間にしわを寄せ、やがて貴方は割れるような緊張性頭痛を感じます。
緊張性頭痛は、ストレスが痛みの引き金となるというその役割からそう呼ばれているだけでなく、頚部、顔面、肩などの筋肉がストレスの多い出来事によって収縮、緊張するからでもあります。緊張性頭痛は、激しいけれど長くは続かない筋収縮性頭痛の一形態です。痛みは軽度から中等度で、頭や肩に圧迫を受けているように感じます。ストレスの時期が過ぎれば大抵頭痛は消失します。すべての頭痛の90%は、この緊張性、或いは筋収縮性頭痛に分類されます。
一方慢性的な筋収縮性頭痛では、数週間から数ヶ月、時には何年もの間継続します。きついベルトを頭に巻きつけられているようなとか、頭と首が鋳型にはめられているような、といった表現でこの頭痛はしばしば表現されます。ある患者は、「誰かが僕の頭を巨大な万力で締め付けているように感じる。」、と言いました。痛みは一定しており、普通は頭の両側に感じられます。慢性の筋収縮性頭痛では頭皮が過敏状態になっており、櫛で髪を梳かすだけでも痛みます。
筋収縮性頭痛の痛みの第一の原因は、筋肉の緊張が持続することであるという風に、多くの研究者に信じられています。血流の低下が原因となっているか、或いは関与しているという研究もあります。
時々筋収縮性頭痛には、吐き気や嘔吐、そして目が見えにくいといった症状が合併しますが、偏頭痛のような頭痛の前に起こる症候はありません。筋収縮性頭痛は、偏頭痛のようなホルモンや食物との因果関係は認められておりませんし、強い遺伝的な連関もありません。
研究によれば、慢性の筋収縮性頭痛は鬱状態や神経症が原因となっていると言われます。こうした患者では、会社内や家庭内でストレスが予期される、早朝とか夕方に頭痛の生じる傾向があります。
感情的な要因だけが筋収縮性頭痛の原因ではありません。頭部や頚部の筋肉を緊張させる生理的な姿勢、例えば読書のときのように顎を引き下げた状態、でも頭部と頚部の痛みを発症します。長時間薄暗いところで書き物をしたり、肩と耳の間に受話器をはさみ続けるとか、またはガムを噛み続けることでさえ、原因になり得ます。
筋収縮性頭痛を引き起こすもっと深刻な問題は、頚部の変形性関節症と顎関節の機能障害、即ちTMDです。TMDというのは、側頭骨(耳の上)と下顎骨つまり下あごの骨との関節の異常であります。この障害は咀嚼が乏しかったり歯ぎしりしたりすることが原因となります。
筋収縮性頭痛の治療には様々なものがあります。まず最初に考えなくてはいけないことは、頭痛の原因となっている障害や疾患を治療することです。例えば頚部の関節炎は坑炎症薬で治療されますし、TMDならば口と顎の矯正装置が役立ちます。 疾患と関連のない急性の緊張性頭痛では、アスピリンとかアセトアミノフェンとかいった鎮痛剤で治療されます。もっと強力な鎮痛剤であるpropoxypheneやcodeineなどが処方されることもあります。こうした薬を長期間服用すると依存性が出てきますので、服用している患者は、定期的な経過観察を受け、主治医の指示に注意深く従うことが必要です。
薬物を用いない慢性的筋収縮性頭痛の治療には、バイオフィードバック、リラックス訓練、カウンセリングがあります。認知的再構築法と呼ばれるテクニックでは、ストレスに対する行動様式とか反応様式を変化させることを患者に教育します。例えば、ストレスの多い状況とうまく対処していると想像することで、患者は勇気付けられるでしょう。段階的筋肉弛緩治療では、個々の筋肉群をまず初めに緊張させ、その次に弛緩するように患者に教えます。最終的には、患者は全身の筋肉弛緩を得られるよう試みます。多くの人々が、浜辺や美しい湖のほとりに横たわっているといった心安らぐ情景を思い浮かべます。受動的筋肉弛緩では筋肉を緊張させることをしません。その代わりに、筋肉が弛緩していくという暗示を患者に与えながら、様々な筋肉への患者の意識の集中を促します。「力を抜いて」とか「筋肉が温かく感じる」といった自己暗示を患者はかけます。
慢性的な筋収縮性頭痛を持つ人たちは、坑鬱剤かMAO阻害剤を服用することで良くなることがあります。筋収縮性頭痛と偏頭痛を併せ持つ人は、脳や脊髄の神経の機能を減速させるバルビタール製剤で時々治療されます。
筋収縮性頭痛の頻度がそれほど多くない人ならば、首の後ろに熱いシャワーや蒸気熱を当てるのが効果的です。良い姿勢を保つために、頚部カラーが推奨される場合もあります。運動療法やマッサージ、軽い頚部の訓練なども効果があるでしょう。
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9.頭痛が深刻な病気の警告となる時とは
他の種類の痛みと同じように、頭痛はもっと深刻な病変の警告となり得ます。頭痛が牽引性であったり炎症性であったりする場合には、特にこれが真実となります。
牽引性頭痛は、痛みを感じる部分が引っ張られたり、伸ばされたり、押しのけられたりすると生じます。例えば、眼輪筋が眼精疲労を補正するために緊縮するようなときです。炎症によって起こる頭痛には、副鼻腔、脊髄、首、耳、そして歯などの病気から生じる頭痛と同じで、髄膜炎によって起こる頭痛が含まれます。耳や歯の炎症と緑内障は頭痛を起こします。口腔や歯の病変では、頭痛は顔面を含む頭部全体に感じられます。
牽引性および炎症性の頭痛は、その下に潜む疾患が癒されることで治療されます。これには手術や抗生剤やその他の薬が必要となるでしょう。
色々な牽引性、炎症性頭痛の特徴は、疾患によって変わります。
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脳腫瘍
毎年11000人の人々が脳腫瘍の診断を受けます。腫瘍が成長するに従い、脳を覆っている神経組織の外層を押したり、痛みを感じる血管壁を圧迫して、しばしば頭痛が引き起こされます。脳腫瘍によって引き起こされる頭痛は、間欠的な場合と持続的な場合があります。典型的なときは、その頭痛は頭部に大きな圧力を受けているような感じです。腫瘍が外科手術や放射線治療や化学療法で治療されたとき、痛みは治まります。
脳卒中
血圧の高い高血圧症、動脈硬化症、心臓疾患などを含む脳卒中につながるいくつかの病気には、頭痛が伴うことがあります。脳細胞が酸素不足で死んでいく時、完結した脳卒中にも頭痛が伴います。 脳卒中に関係する頭痛は、食餌療法、運動療法、薬物治療によって患者の状態が注意深く管理されれば予防できます。
一時的な脳への血流欠如から生じるTIA(transient ischemic attack:時には「mini-storoke」と呼ばれる)には、軽度から中等度の頭痛が伴うことがあります。頭の痛みは、血栓の近傍や血流が遮断された病巣に生じます。偏頭痛とTIAの症状が似ていますので、診断に問題が起きる恐れがあります。40歳以下でTIAを患う稀な人は偏頭痛と誤診される可能性がありますし、TIAを起こしやすい60歳以上の偏頭痛患者は、脳卒中に関連した頭痛に間違えられることがあります。
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脊椎穿刺
腰椎穿刺、脊椎穿刺を受けた人の4分の1に頭痛が発生します。多くの研究者は、こうした頭痛の原因は脳脊髄液が漏れることであると信じています。脳脊髄液は、痛みを感じる脳の膜の間を流れており、脊髄まで流れ下りてきます。この液体が脊椎穿刺による小さな針穴を通して漏れ、先述した膜が頭蓋骨と擦れあって痛むのだと解釈されています。頭痛は患者が立っている時にのみ発生するので、治療のためには、頭痛が治まるまで患者を横臥させておきます。いずれにせよ数時間から数日の間で治まります。
頭部外傷
頭部に一撃を受けると、直後でも1ヶ月後からでも頭痛を発症する事があります。外傷の重傷度と頭痛の強さの間には殆ど関係がありません。外傷性頭痛の一つの原因は、頭皮の瘢痕形成です。もう一つの原因は血管の破綻で、血腫と呼ばれる血液の溜まりを生じます。この血液の固まりは脳組織を変位させて、麻痺、意識障害、記名障害、痙攣などと同様に頭痛の原因となります。速やかに症状を取り去るために、血腫を抜くことができます。
動脈炎と髄膜炎
頭部の動脈の炎症である動脈炎は、殆どが50歳以上の人々に起こります。自覚症状として、拍動性の頭痛、発熱、食欲不振などがあります。目が霞むとか物が見えなくなるといった症状も起こり得ます。すぐに副腎皮質ホルモンを治療薬として使えば、症状は軽快します。
脳の外側の膜である髄膜の炎症や、静脈炎と言って静脈の炎症によっても頭痛が起きます。
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三叉神経痛
三叉神経痛あるいは有痛性チックは三叉神経の異常に起因します。この神経は顔、歯、口、鼻腔に知覚神経を供給し、また口の筋肉を動かして咀嚼を可能にします。症状は頭痛や激しい顔面痛で、それらは短時間しか続きませんが、顔や口の引き金部分にちょっと触ったり、ほんの少し動かすだけで我慢のならない激しい痛みが誘発されます。 三叉神経痛の患者は、歯磨きや患側の口で物を噛むことをしばしば恐れます。多くの三叉神経痛の患者は、carbamazepineなどの薬で治療されます。薬に反応しない患者では、三叉神経に対しての手術で軽快します。
副鼻腔炎
急性副鼻腔炎と呼ばれる病気では、ウィルスや細菌による上気道の感染が副鼻腔内を蔽っている膜に波及します。こうした腔の一つかそれ以上が細菌やウィルスの液に満たされると、副鼻腔炎が生じて痛みや頭痛が起こります。急性副鼻腔炎の治療は、抗生物質、鎮痛剤、消炎剤で行います。
慢性副鼻腔炎は、ハウスダスト、ブタクサ、動物の毛、煙などの刺激物質に対するアレルギーによって起こります。慢性副鼻腔炎が頭痛の原因になるかどうかについては、研究者たちは否定的であります。
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10.子供たちの頭痛の原因について
子供たちも大人と同じように、感染や外傷、そして頭痛につながるストレスを経験します。事実若い人達が青年期に入ったり、思秋期のストレスに遭遇したり、転校したりすると、頭痛の頻度が上昇するという研究報告があります。
偏頭痛は小児期から青年期にしばしば発症します。最近の統計によると、学童期の半分に及ぶ子供が何らかの頭痛を経験しているということです。
偏頭痛を持つ子供達には、吐き気と過度の嘔吐が見られます。頭痛はなく、周期的に吐く子供たちもいます。これは一般に腹性偏頭痛と呼ばれています。こうした子供たちが成長した時には、大抵頭痛を発症するということが研究によって判っています。
医師が子供の偏頭痛に使う治療薬は沢山あります。使用される薬の種類としては、鎮痛剤、制吐剤、坑痙攣剤、ベーターブロッカー、そして鎮静剤があります。頭痛の原因となる食べ物を子供に与えないようにする食餌療法が処方されることもあります。時には子供と親が心理学的カウンセリングを受けたり、また精神科的な治療を受けることもあります。
子供の頭痛がうつ病の兆候であることもあります。もし性向の変化や睡眠習慣の変化といった症状とともに子供の頭痛が増強する場合には、両親は小児科医の注意を喚起すべきです。
坑鬱剤や精神療法は、小児期のうつ病とそれに伴う頭痛に効果を示します。
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11.結語
もし貴方が頭痛に悩まされ通常の治療では治らなくても、諦めないでください。問題ある結婚を解決したり、資格試験に合格したり、その他ストレスの多い問題を取り除いたときに、直ちに頭痛が消失することを発見する人たちがいます。また一方で、ストレスに対する反応の仕方をコントロールすることで、頭痛が消失することを見つける人々もいます。
ある一人の女性は言います。「私は数年間偏頭痛を持っていましが、その後消え去りました。私が思うに、それは人生における自分のゴールを低くした結果なのです。最近では、喩え一晩に成すべき事が100有ったとしても、私はそれを苦にすることは有りません。私はノーと言うことを学んだのです。」
ノーと言えない人たちや、とにかく頭痛持ちの人々にとって、今日の頭痛研究は希望を与えてくれます。NINDSが支援する世界中の科学者たちの研究は、この複雑怪奇な病の理解を深め、治療のためのより良い手段を提供することを約束いたします。
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用語解説
血管造影(angiography)---angiogramと呼ばれる血管の写真を撮るための画像撮影技術。
前兆(aura)---古典的偏頭痛の自覚症状の一つで、患者は点滅する光やジグザグの線を見たり、視覚を一時的に失ったりする。
脳低動脈型偏頭痛(basilar
artery
migraine)---若い女性に月経周期と関連して起こりやすい偏頭痛の一つで、脳の主幹動脈の異常が関係している。自覚症状には、眩暈(めまい)、複視(物が二重に見えること)、協調運動障害(調整の取れた滑らかな動きができないこと)などが含まれる。
良性活動性頭痛(benign
exertional
headach)---走る、持ち上げる、咳をする、鼻をかむ、腰を曲げるといった肉体活動によって起こる頭痛。
バイオフィードバック(biofeedback)---リラクセーションを押し進めるために、血圧や筋緊張などの肉体的状態を意識的にコントロールする方法を患者に訓練する技術
群発性頭痛(cluster
headache)---激しい痛みの頭痛が突然に起こり、30-45分継続する。群れをなすように発作が繰り返し起こるのでこう呼ばれる。頭痛は目の周辺の軽い痛みから始まり、同側の顔全体に広がっていく。
コンピューター断層撮影(computer
tomography:CT)---X線とコンピューター分析を使って体の組織や構造の画像を得る方法。
ジヒドロエルゴタミン(dihydroergotamine)---群発性頭痛の治療に注射して使用する薬物。坑偏頭痛薬の酒石酸エルゴタミンの一種。
脳波(electroencephalogram:EEG)---脳の電気的活動を記録する方法。
筋電図(electromyography:EMG)---筋肉の電気的活動を記録する方法。EMG訓練というバイオフィードバックでは、患者は顔や首や肩の筋肉の緊張を制御する方法を学ぶ。
エンドルフィン(endorphins)---生体が持つ痛みを和らげる化学物質。激しい頭痛のある患者では、痛みのない人たちよりエンドルフィンが少ないという説がある。
酒石酸エルゴタミン(ergotamine
tartrate)---偏頭痛の痛みを伴う血管の拡張期を抑える薬物。
麻痺性偏頭痛(hemiplegic
migraine)---一時的な身体の一側の麻痺(hemiplegia)を生じる偏頭痛の一種。
炎症性頭痛(inflammatory
headache)---副鼻腔炎のような他の病気の一症状としての頭痛で、隠れた疾患を治療することで軽快する。
核磁気共鳴画像(mgnetic
resonance
imaging:MRI)---電磁波と磁場とコンピューター解析を用いて、身体の組織や構造の画像を得る方法。
偏頭痛(migraine)---脳内の血流や化学物質の変化によって起こるとされる血管性頭痛。その変化で起こる一連の出来事には、脳へ血液を供給する動脈の収縮、ある種の脳内化学物質の放出があり、その結果激しい頭痛、嘔吐、視覚障害などが起こる。
筋収縮性頭痛(muscle-contraction
headache)---主に持続した筋肉の緊張によって起こる頭痛で、恐らく脳への血流制限によっても起こりうる。筋収縮性頭痛には二つのタイプがあり、一つはストレスによって生じる緊張性頭痛で、もう一方は慢性の筋収縮性頭痛である。後者では、一定の頭痛が長期間持続し、殆どの場合頭の両側に頭痛が感じられる。
痛覚受容体(nociceptors)---痛覚神経の末端で、圧迫や筋緊張、血管の拡張やその他で刺激を受けると、神経繊維を通して脳の神経細胞に情報を送り、身体の特定部分が痛んでいるという信号を出す。
眼球麻痺性偏頭痛(ophthalmoplegic
migraine)---偏頭痛の一種で、目の周辺に痛みがあり、瞼が垂れ下がったり、複視(物が二重に見える)やその他の視覚障害が伴う。
プロスタグランディン(prostaglandins)---偏頭痛発作に関与していると考えられている生体内にある疼痛物質。動脈の拡張によって放出される。プロスタグランディンは様々な生理的過程に関与している極めて強い影響力を持つ化学物質である。
セロトニン(serotonin)---動脈を強く収縮させる作用を持つ重要な神経伝達物質の一つで、脳への血液供給を低下させ、頭痛時の痛みの原因となる。
副鼻腔炎(sinusitis)---ウィルスや細菌による副鼻腔内の感染症。感染は副鼻腔内に炎症を起こし、痛みや頭痛の原因となる。
偏頭痛重積(status
migrainosus)---稀で持続性のある激しい偏頭痛の種類で、強い痛みと吐き気のためにしばしば入院を要する。
サーモグラフィー(thermography)---赤外線カメラによって皮膚の温度をサーモグラムと呼ばれる写真に変換する方法で、時々頭痛の診断に用いられる。サーモグラムでは色々な温度が異った色で表現される。
有痛性チック(tic
douloureux)---三叉神経痛を参照。
牽引性頭痛(traction
headache)---頭の痛みを感じる部分を引っ張ったり伸展させたりして起こる頭痛。例えば、眼精疲労を代償するために目の筋肉が緊張するときなど。
三叉神経痛(trigeminal
neuralgia)---三叉神経の異状によって生じる。症状は頭痛や強烈な顔の痛みで、短くて身を切られるような鋭い痛みを感じる。
血管性頭痛(vascular
headache)---脳自体の血管や血管系の機能異状によって起こる頭痛。偏頭痛は血管性頭痛の一種である。
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